澄明庵には17世紀以降にイングランドで出版された印刷本がいくつかあります。今回は特に1600年代に出版された本を2冊紹介します。はじめは何と言ってもチョーサー作品集です。揺籃期本の時代にウィリアム・カクストンがチョーサーの『カンタベリー物語』を印刷して以来、16世紀になると盛んにチョーサーの作品が印刷出版されるようになります。中でも作品集は幾度となく出版され、この流れは現代にいたるまで続きました。今回紹介するのは1687年に出版されたトマス・スピート(Thomas Speght)の The Works of Jeffrey Chaucer です。
見開きのタイトルページです。右下にロンドンで1687年(MDCLXXXVII)に出版されたことが記されています。左ページに編者 Thomas Speght の名があります。チョーサーの伝記が続きます。左ページの一番下にThe という写本時代のキャッチワードが付けられています。右ページの冒頭の語と同じです。本文冒頭のページです。ヘンリー8世への献辞です。この全集が出版されたのは1687年ですからヘンリー8世の治世ではありませんが、最初にウィリアム・シンにより全集が出版された時の献辞がそのまま使われているのです。『カンタベリー物語』の「総序(General Prologue)」のページです。見開きで撮影した同じ「総序」です。「総序」が続きます。「総序」が終わり、「騎士の話(The Knight’s Tale)」が始まります。