(1)『カンタベリー物語』の「総序」だけを一冊に纏めた写本を掲載します。27ページありますが、羊皮紙の都合で全858行中457行までで終わっています。主要な人物に関しては人物画を添えました。(2014年制作)

縦 16.5 cm x 横 11.5 cm で、27 ページの小さい写本です。中世の写本には本が開かないようにストッパーがついているものが多いです。
写本の外観です。
旅に出たチョーサーの肖像画です。
’Whan that Aprill with his shoure soote ‘ で始まる「総序」の冒頭のページです。
導入部が終わると、騎士 (knight) の紹介が始まります。
騎士の息子で騎士見習い (squire) の紹介です。
キャピタル文字から女子修道院長 (prioress) の紹介が始まります。
右ページの 4段抜き(4 行にまたがるキャピタル文字)の A からは修道士の紹介です。文字の大きさによりメッセージの重要性が強調されます。直前の小さいキャピタル文字は女子修道院長付き chaplain の紹介と同行する 3 人の司祭を紹介していますが、それ以外何も述べていません。人物に関するメッセージの重要性に違いがあることをキャピタル文字の大きさで区別していることがわかります。
修道士の紹介はかなり長いことがわかります。関心のある方はこの紹介文と「修道士の話」を読んでみてください。なぜ長いかがわかると思います。
托鉢修道士 (friar) の紹介です。この紹介文も長いです。なぜでしょう?
商人 (merchant) の紹介です。着ている服、帽子、乗っている馬すべて高価なようです。ちなみに各ページの右下にある文字列は catchword と言って、次のページの始まりの文字列を示しています。ページナンバーの代わりでもあります。
次は学僧 (clerk) の紹介です。4 段抜きの大きなキャピタル文字で始まります。良くも悪くもチョーサーは宗教者の言動に強い関心を持っているようです。
右ページの下から franklin (郷士・自由土地保有者)の紹介が始まります
右ページのキャピタル文字からは小間物商、大工、織物商、染物屋、家具総職人が紹介されます。あくまでも巡礼の旅の同行者としての紹介です。
上の裕福な職人たちが一緒に連れていたのが次に紹介される料理人 (cook) です。
3 段抜きで紹介されるのは医学博士 (doctor of physic) です。
バースの女 (wife of Bath) の紹介ですが、羊皮紙が足りなくなり、途中で終わりです。右の空白のリーフは表紙を固定するための羊皮紙で、ページには殆ど使うことのない山羊(やぎ)皮です。

Top